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社長コラム

【第2話】どぶろく造り:歴史と文化伝える酒

昨年11月に「どぶろく」を発売した。おかげさまで好調な売れ行きだ。どぶろくは全国でも30社程度が製造している。酒造期である冬季の生産が一般的だが、弊社では通年で製造販売している。この取り組みについて紹介したい。   どぶろくの造り方はいたってシンプルだ。まず、蒸米と麹(こうじ)を約60℃の湯で甘酒の状態まで糖化させる。その後、急冷し酵母菌を加えると発酵が始まり、約10日で完成する。口に含むとブドウ糖の甘味と乳酸菌の酸味が広がり、細かな泡と馥郁(ふくいく)とした香りが食欲をそそる。   私は、どぶろくの一番の魅力は、泡にあると思っている。シャンパンのようにわき上がる泡の舌触りは数億とも言われる酵母菌が作りだす魅惑の食感だ。この発泡性を残すため弊社では低温殺菌を行い、保管流通とも5度以下で管理している。それでも瓶内では酵母の活動により香味が日々変化していくため、2週間の賞味期限を設けて、早めに飲んでいただいている。お酒を普段飲まないお客様からも評価いただけるのはうれしいことだ。   どぶろくの歴史は稲作文化と同じくらい古い。お神酒と同じく宗教儀礼上も重要な役割がある。明治時代に自家醸造が禁止されるまで全国各地の農家で地域色豊かなどぶろくが作られてきた。これは日本ばかりではない。穀物から糖分を抽出し酵母菌の力を借りてアルコール発酵させた民族酒は世界中にある。原料もヤシ、ヒエ、トウモロコシなど様々だ。現在はあまり飲まれなくなったものも多いが、それぞれに民族の歴史と伝統を色濃く受け継ぐ民族の酒だ。   どぶろくも2002年にどぶろく特区が設けられ、製造要件の緩和により、身近に楽しめるようになった。また近年の塩麹ブームに見られるように麹や甘酒が再評価されているのも心強い限りである。日本が世界に誇る麹文化と清酒醸造技術、その原型としてのどぶろくの魅力をこれからも広く伝えていきたい。2020年の東京五輪でも日本文化の酒どぶろくで「おもてなし」したいものだ。

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