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社長コラム

【第12話】補助金の活用:支援に頼らぬ覚悟も

酒造りが佳境に入る師走を迎えたが、衆議院選挙となった。「アベノミクス」の評価が問われる選挙と言われるが、酒造業界でもアベノミクスの影響は少なからず受けている。農産物の海外への輸出の取り組み強化などがマスコミでも伝えられるが、より現場に関わるものとして「中小企業ものづくり補助金」を取り上げたい。
 
この補助金は、日本の国際競争力の源泉でもある「ものづくり」の技術を一層磨くための支援事業で、成長分野の市場ニーズにあった形に製造現場を変革しようとする企業の研究開発や設備投資を支援する。食品製造をはじめ、ものづくり全分野が対象で、2013年度予算は1400億円、全国で約1万5000社(長野県内は約400件)の申請が採択された。
 
清酒業界でもかなりの数に上る。製造現場で使用する機械設備等の改良や新規導入の案件が多く、業界の技術レベルと品質向上に大きく貢献すると考えている。弊社も地元の金融機関の指導のもと「酒の加熱殺菌技術の高度化」というテーマで採択されたので、有意義に活用したい。
 
国や県からの支援、補助金、助成金は、実に広範な分野にわたる。農産加工関連だけでも、新規就農、販路開拓、農商工連携、6次産業化支援などさまざまだ。一企業ではなく、地元商工会議所やJAなどの団体が受け皿となるケースが多い。
支援を機に事業が発展することもあるが、支援期間が終わって財源がなくなると継続できず終わってしまう事例も多く見てきた。特に販路開拓などはある程度継続しないと成果に結びつかないのだが、それに対する支援は通常1年、長くても3年程度と活用しにくい面もある。
支援を受ける側にも問題がある。実現したい事業があり、それを遂行する手段として支援策を利用するのが本来だが、「どういう内容にしたら補助金を得られるか」という観点で事業の方向性を決めてしまう傾向があるからだ。支援を受けなくても自力で進める覚悟が本当は必要なのだ。
 
公的機関の行う支援事業の財源は税金だ。一人の経営者として、また酒造業界に身を置くものとして、事業の目的を明確に持った上で、支援策を有効利用していきたいが、それに頼らない覚悟を持ち続けなければと肝に銘じている。

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